「野の佛」

昨日、神保町で買った一冊です:
『新版 野の佛』(若杉慧・東京創元社創元選書、昭和38年初版、
昭和54年第11版、四六判)

豊島八十八箇所を周るようになって、あちらこちらで仏さまに出会います。
そのような仏さまについて記した本を図書館で数冊借りたのですが、
どれもフィールドワークの教科書のような感じがして、
少しもの足りないものを感じていました。
しかも、練馬区内の佛さまを扱ったものは少なく…。

『新版 野の佛』は、練馬区在住だった作家の方
(『エデンの海』の原作者とのことですが、私は記憶がない。。)が、
練馬はじめ全国各地でご自身で写真を撮り、その仏さまにお名前をつけ、
仏さまについて散華のような文章を書いておられます。

e0098256_23582374.jpg

名前をつけることを始められたのは、
写真を整理するのに番号で呼ぶのは……というお気持ちからと書かれていますが、
「梅香智清佛」「紅蔦天平佛」「月窓樹林佛」などなど、
どれもが美しく慈しみに満ちています。

上の写真は、右が「斜陽釈迦佛」、左が「秋霜紅顔佛」と名づけられた仏さまなのですが、
それらの解説を読むと、それが解説というより、
もはや詩の領域の言葉であることに気づきます:

5 斜陽釈迦佛  東京練馬区北町
乾いた苔がさまざまな紋様を染めて、夕日がさすといっそう美しい。落日をうけて眉間の光とし、斜陽釈迦佛と名づける。実は阿弥陀立像であることをのちに知ったが、一旦(いったん)の印象は変えないことにする。
  愛光院玉宝明染信士霊
  享保壬戌七月廿六日 施主 内田作兵衛

6 秋霜紅顔佛  東京都練馬豊玉南町
頭上に垂れた蔓草の実が、秋の終り頃珊瑚の瓔珞(ようらく)のようにかがやいていた。その年の暮大風が吹いて、私の庭の檜の樹なども倒れた。正月二日この墓地に来てみたら、蔓草は枯れ落ち、赤い実は紫ずんでなかばこぼれていた。顔にあてた手が霜やけにふくらみ、寒さに赤くなった幼女の貌(かお)を思わせた。
  椿山妙貞禅定霊 享保十七年壬子秊二月廿七日
  (秊は年の本字である)

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by youyouhibiki | 2010-05-26 23:39 |  花遍路 豊島八十八箇所 | Comments(0)


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