コルベ神父 (6)

1941年2月14日にコルベ神父は逮捕され、まずパヴァイアクへ、
そしてアウシュヴィッツの強制収容所に入れられます。
神父は収容所で人々を励まし、懺悔を聞き、
こっそりミサをあげました。
病人に自分のわずかなパンを与えることもありました。

ある時、コルベ神父のパンが盗まれましたが、
誰かが犯人をみつけ、とりもどしてくれました。
ところが神父は盗んだ人に再びパンを渡しました。

イスラム教徒がいると、宗教的な習慣や祝日を尋ねるなどして、
彼を慰めました。

アウシュヴィッツではまず第一にユダヤ人を、
次に神父や修道士を虐待したので、神父も「ポーランドの豚」
と呼ばれ、何度も殴ったり蹴られたり、笞打たれたりしました。
あまりにもひどく殴られたので病棟に移されましたが、
病室でも一番扉に近いベッドを選びました。
「ここにいれば、夜中に亡くなって運び出される人のために
祈ることができるから」。

しかし生きている人々には「希望を持って、
必ずここから生きて出るように」と励ましました。

7月に囚人の一人が脱走して捕まらないので、
罰として10名が餓死刑に処せられることになります。
無作為に選ばれた10名の中の一人が、
「ああ、かわいそうな妻と子どもたち!」と叫びました。
そのとき、コルベ神父が一歩、看守の前に進み出て言いました。
「私があの人の代わりに死にます」
「お前は誰だ」と聞く看守にコルベ神父は言いました。
「カトリック司祭です。私には家族がありませんから。」

通常だったら、コルベ神父は11番目の餓死刑囚になっていたと
思われます。
しかし、不思議なことに看守はそれを許し、
コルベ神父は選ばれていた一人と入れ替わりました。

餓死室に向かう10人。
そのときの夕焼けがあまりにも美しかったことを、
どの本も書いています。
『夜と霧』の中で「世界ってどうしてこう綺麗なんだろう」と
囚人がつぶやいた、あの夕焼けと同じ美しい夕焼けです。

餓死室に入れられると、あまりの苦しさに気が狂うといいます。
隣の餓死室では、前から入っていた死刑囚たちが苦しみの声を
あげていました。しかし、コルベ神父たちの部屋から、
祈りの声が聞こえてきたといいます。最後まで平安で、
そこはまるで聖堂のようだった、と、後の証言が伝えています。

餓死室に入れられて14日目、ほかの9人が亡くなっても、
コルベ神父はまだ生きていました。
そして、あとがつかえていたので、フェノール注射を打たれて
亡くなりました。
1941年8月14日、享年47歳。
それはコルベ神父があれほどまでに愛した聖母の、被昇天の祝日の
前日のことでした。

     *

ルーマニア系のフランス劇作家イオネスコは、
オペラ『マキシミリアン・コルベ』の台本を書いていますが、
あるインタビューでこう語りました。

「私は、聖性が人類を救う、ということを知っています。」

     *
     *
     *

先に紹介した永井隆博士は『原子野録音』に自身の不思議な体験を記している。
要約すると、
1945年8月9日 長崎にて被曝。ガラス辺により負傷。特に右頚動脈を切断。
9月10日 原子病による壊疽により頚動脈から再び出血。止血できない状態に。
9月20日 出血がとまらず、危篤に陥り、終油の秘跡を受ける。
シェーンストーク(交代性無呼吸)。
本河内のルルドの水を誰かが飲ませてくれたとき、
「どういうわけであったか、マキシミリアン・コルベ神父のお取次を願え
という声が聞こえたようであった。
私の心は従順にそれに従った。」
その後、血はぴたりと止まった。大きかった傷もその後、目立たなくなったという。
(『原子野録音』「ルルドの奇跡」)

     *
     *
     *

参考文献
『コルベ神父 アウシュヴィッツの死』ダイアナ・デュア著 時事通信社
『コルベ神父物語』曽野綾子著 聖母の騎士社
『アウシュヴィッツのコルベ神父』マリア・ヴィノフスカ著 聖母文庫
『ながさきのコルベ神父』『身代わりの愛』小崎登明著 聖母の騎士社
『原子野録音』永井隆著 聖母の騎士社
『ゼノ死ぬひまない』松居桃樓著 春秋社
『イオネスコによる「マクシミリアン・コルベ」不条理から聖性へ』クロード・エスカリエ著
聖母の騎士社
『夜と霧』フランクル著 みすず書房

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by youyouhibiki | 2012-08-14 22:58 | コルベ神父 | Comments(0)


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