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『タンホイザー』追考

『タンホイザー』追考_e0098256_2226439.jpg

14日に新国立劇場で『タンホイザー』を見てから少し時間が経ち、
ちょっと落ち着いてきたところで『タンホイザー』について再び考えてみた。

というのも、今回のオペラを見たある若いお嬢さんが
「だらしない感じもなんだかタンホイザーっぽくて好き」と
おっしゃったからだ。

「ええーっ、タンホイザーってそういう人だったの??」と思いつつも、
「今回のタンホイザーの、特に歌合戦の場面、
あのパジャマっぽい服はなんなのだ?」という疑問も、
その解釈なら解決されるように思う。

だけど、私のタンホイザー観は180度違う。

まず、見ていて私は、ポール・クローデルのことをちょっと思い出していた。
クローデルは、一生を神に捧げようとして、修道院に入ることを決意するが
修道院から外で働くように言われて(彼はすでに外交官だった)断られてしまう。
そしてその直後、船上で人妻と出会い、恋に落ちてしまう。

その恋がタンホイザーの「ヴェーヌスベルク」と同一のものだとは思わないけれども、
クローデルにしてもタンホイザーにしても、エロスの行き着く先が神の不在であること、
大きな虚無の淵であるからこそ罪として自覚されるのだと思う。
神に赦しを乞わなくてはならないものだと解釈している。
(また、正式なタイトル『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』が示すように、
歌合戦が重要な位置を占めるのも、それが言葉による真剣勝負だからだと思っている。)

つまり、タンホイザーは神と虚無の間にあって、人を代表する存在であり、
ある意味では神から選ばれた人間なのではないか?

いま、パンフレットを読み返して改めて演出家の意図が充分に
伝わる演出だったと思う。透明なアクリルを使った演出は
神聖な雰囲気を十二分に伝えていた。
パンフレットで、演出家ハンス=ペーター・レーマンはこのように
書いている。
「いずれにせよ、『タンホイザー』の最大のアクチュアリティーは、
タンホイザーという人物にこそあります。彼は、さまざまな
問題を抱えた人間の、一個の普遍的な『例』であり、私が
幕切れでタンホイザー1人を残すのも、そうした意味合いを
はっきりさせるためなのです。『慈悲の奇蹟よ、万歳!
救いがこの地上にもたらされた!』と合唱が歌うのも、
この救いが、地上に住む私たち全員に関係するからこそです。…」


……だからこそ、だからこそ突っ込んで聞いてみたくなるのは、
あのパジャマのような衣装の意味だ。。。


画像がないと寂しいので、こちらより、タンホイザー:
http://www.answers.com/topic/tannh-user-2?cat=technology
by youyouhibiki | 2007-10-25 22:10 | 音楽・演劇・映画


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