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久しぶりの神保町~句集『草影』

今日は、久しぶりに神保町の得意先に行きました。
この得意先に行く用事ができると、嬉しくなります。
もちろんお目当ては古本屋さんです。
今日も少し早めに着いて、何軒かのぞいてみました。

小宮山書店店頭に吉本隆明の『源実朝』(日本詩人選12 筑摩書房)が
500円で出ていました。
先日の『建礼門院右京大夫』(中村真一郎著)
白金高輪の新古店で100円だった(状態は悪かった)ので迷ったけれど、
鎌倉に行ったばかりなので、買いました。
他にはいま、特に欲しい本が見あたらなかったので、
今日は散財しなくてすんだ。。。と思ったのですが。。。

用事を済ませて、お茶の水に戻るときに、ふと足をとめた虔十書店店頭で
桂信子句集『草影』(ふらんす堂)を見つけてしまいました。

久しぶりの神保町~句集『草影』_e0098256_2354958.jpg

3000円+消費税のところ、1500円。迷って数分、あたりをうろうろしたけれど、
ずっと欲しかった本なので、買うことに。。。

桂信子さんの俳句は、以前から好きでした。いちばんに思い出すのは代表作
  ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜
ですが、私は、後期の作も好きです。

  草の根の蛇の眠りにとどきけり       (「樹影」より)

  雪たのしわれにたてがみあればなほ    (「草影」より)

これからゆっくり味わいながら読むのが楽しみです。

     *

以前、下記の通りの文章を書いたので、参考までに引用しておきます。

【桂信子さんのこと】

  ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜
  やはらかき身を月光の中に容れ

ともに私の好きな俳人、桂信子さんの句です。

もっとどんな句があるのか知りたいと思って 図書館などで調べてみたのですが、
現存する作家の最近の句って、 意外とわからないものです。
単行本に載っているものは、その本の発行年までのものだし、
俳句の雑誌を毎月見るほどマニアではないし…。

と思っていたら、図書館の「角川 俳句」バックナンバー (2005年3月号)に、
桂信子さんの特集を見つけました。。ところが悲しいことに「追悼特集」…。
90歳で亡くなられたので、大往生なのでしょうが、 とても残念に思いました。

でも、気をとりなおして、特集号でその人生を追いながら、
俳句も紹介してみたいと思います。

大正3年大阪生まれ、娘時代より俳句を一人で作り始め、
のち、日野草城主宰誌に投稿をはじめる。
25歳で結婚。その頃作った句は、たとえば

  梅林を額明るく過ぎゆけり
  ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ

など、そのままいけば「趣味に俳句をされる奥さん」でしかなかったかも知れないのですが、
2年後に夫が喘息発作で 急死します。

  夫逝きぬちちはは遠く知り給はず

当時(戦前)では珍しい「職業婦人」となり、職務を全うしながら(30歳以降は神戸の大学
図書室勤務、 特集には「無遅刻無欠席で勤務」とあり)、句作に励むこととなりました。

最初に揚げた二句は、昭和24年(32歳)発行された 「月光抄」からの引用ですが、
なにしろ戦後まだ間もないころの日本でした。
未亡人で職業婦人で、となれば世間からは好奇の目で見られ、 句も当時のカストリ雑誌に
盗用された、と 特集には書かれています。

昭和30年(41歳)刊行の「女身」まで、 女性であることを追求した句が多く、
日頃そんなに女性であると意識しないで生活している 私などは、
なんだか鋭いナイフを突きつけられるような 気にもなってしまいます。

  衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く
  窓の雪女体にて湯をあふれしむ

その後を特集では「後期にあたる」としていますが、
句は、自身のうちの女である部分より「孤(己)」の部分を
つきつめていったと思われ、実は私はここからがさらに
桂信子さんの好きなところです。

  母の魂梅に遊んで夜は還る   (「新緑」昭和48年刊、59歳)
  草の根の蛇の眠りにとどきけり  (「樹影」(平成3年刊、77歳)
  木も草もいつか従ひ山眠る   (「花影」平成8年刊、82歳)

いったいにとても気の強いかただったらしいエピソードは 特集のお弟子さんの追悼文にも
書かれていますし、 それでなければ詠み続けていけなかったでしょう、
と想像しますが、最晩年は:

  雪たのしわれにたてがみあればなほ
  亀鳴くを聞きたくて長生きをせり
  万物の一塵として年迎ふ    (「草影」平成14年刊、89歳)

そして句集以降:

  夏怒涛海は真を盡しけり   (平成16年8月)
  元旦やまつさらの空賜ひたる  (平成17年1月号「角川 俳句」のための句)

平成16年12月16日、西宮にて90歳の生を 閉じられたそうです。

平成7年には阪神大震災にも遭われたとのことで、
関西にお住まいの方のほうがくわしくご存知だったかも
しれませんが、巡り合えてよかった句であり、 人となりでした。
by youyouhibiki | 2008-01-29 00:14 | 詩歌(下記以外)


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