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『方丈記』

昔、祖母が持っていた与謝野晶子訳『源氏物語』、
4号(5ミリ四方)くらいの活字で組まれていて
ページ数が1000ページ以上あり、本の厚さも10センチくらい。
子ども心に、
「もっと字を小さくしてページ数を減らせば、軽くなるのに。。。」
と思ったものです。

でも、最近、古典に親しむようになったり、
自分で製本をするようになって、
「古典を読むなら、字が大きくて間があったほうがいい」
と思うようになってきました。
『方丈記』_e0098256_21194311.jpg

先日の『すらすら読める徒然草』(講談社・中野孝次訳・解説)に続いて
『すらすら読める方丈記』(同)を、書道の先生にお借りして読み、
その思いを強くしました。
『方丈記』_e0098256_217466.jpg

『すらすら読める方丈記』では、上段に原文、下段に中野孝次氏の訳、
その後ろに中野孝次氏の解説が配置してあって、
とても読みやすく奥の深い本に仕立ててあると思いました。
『枕草子』『徒然草』と並ぶ、日本の三大随筆のひとつ『方丈記』、
出だしのところは有名だけど、それから続く文章も、
リズムがあって、それはそれは素晴らしいものです。

『方丈記』については、高校の授業でも少し習ったし、
時代背景についても、聴いたはずですが、
まったく覚えていません。orz
最近、この時代の本を読んで、時代背景なども少し知るようになり、
はじめて分かったことだらけでした。

特に印象に残ったのは、
○鴨長明さんが出家してからは人を使わず、完全に自由人として
 生きたこと。
 (このような生活を「人を雇える立場にいる多くの人」が実現したのは、
 産業革命以後なのでは?)

○折りたたんで移動可能な、いわゆる「プレハブ住宅」を作ったこと。
 『方丈記』を「住宅論」とする読み方もあり。
 (天変地異や遷都で、「所有する」ことの虚しさの現れでもありました。)

○「和漢混淆文」で書かれたものはそれ以前にもあったけれど、
 『方丈記』が最初の優れた文芸作品であると言われていること。
 (後鳥羽院が神社を与えるという有難い申し出を蹴って、出家するという、
 孤独な状況に辿りつかなかったら、きっとそれは生まれなかったでしょう。)

○長明さんの幸福論、人生観。
 (長くなるので省略)

長明さんが、どうしてもなりたいと思ってなれなかった河合神社の禰宜。
でも、ネットを調べてみたら、今はなんとそこに、復元された方丈の住居が
建てられているそうです
『方丈記』_e0098256_21491452.jpg


長明さんは、『方丈記』を書いたあと、源実朝に和歌を講じるために、
鎌倉へ出立したそうです。
そこでどんな話をしたのかは、この本には書かれていません。
買い置きしてある吉本隆明の『源実朝』を次に読んでみれば、
その時の模様が描かれているかもしれません。。。


おまけ(『方丈記』より一節):
また、ふもとに一つの柴の庵あり。
すなはち、この山守が居る所なり。
かしこに、小童あり、時々來りてあひ訪ふ。
もしつれづれなる時は、これを友として遊行す。
かれは十歳(とお)、われは六十(むそじ)、その齡、ことの外なれど、
心を慰むる事、これ同じ。

或は茅花(つばな)を抜き、岩梨をとり、
零余子(むかご)をもり、芹をつむ。
或はすそわの田井に至りて、落穂を拾ひて穂組をつくる。
もし、日うらゝかなれば、峰によぢのぼりて、
はるかに故郷(ふるさと)の空を望み、
木幡山、伏見の里、鳥羽、羽束師(はつかし)を見る。

勝地は主(ぬし)なければ、心を慰むるに障りなし。
歩み煩ひなく、心遠く至る時は、これより峰つゞき、炭山を越え、
笠取を過ぎて、石間(いわま)に詣で、或は石山を拝む。
もしはまた、粟津の原を分けつつ、蝉丸翁が迹を訪ひ、
田上川を渡りて、猿丸大夫が墓を尋ぬ。

歸るさには、をりにつけつゝ櫻を狩り、紅葉をもとめ、
蕨を折り、木の實を拾ひて、
かつは佛に奉り、かつは家土産(づと)とす。

もし夜しづかなれば、窓の月に故人を忍び、
猿の聲(こえ)に袖をうるほす。
くさむらの螢は、遠く眞木の島の篝火(かがりび)にまがひ、
曉の雨は、おのづから木の葉吹く嵐に似たり。

by youyouhibiki | 2008-08-31 21:05 |  平安~鎌倉の文学


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