カテゴリ: アルスのノートと本( 3 )

震災とアルス

『書物』(森銃三と共著・岩波文庫)や、『古句を観る』など、
柴田宵曲の書いたものはどれも素敵に面白いので
少しずつ読んでいるのだけど、
随筆集『団扇の画』(岩波文庫)を読んでいたら
アルスのことが少しだけ書いてあった。

それは大正11年、震災の前の年のこと:
  (…)装幀の事は林若樹氏の意見の下に進行し、
  背文字は先生(寒川鼠骨)に御願したいということになった。
  先生は即座に巻紙を取って幾通りもしたためられ、
  どれでもいいのを択(えら)んでくれといわれたので、
  そのままアルスへ持って行った。
  三崎町通りにあった割烹学校の二階に
  アルスが陣取っていた時代である。
  下でひもを引いて鐘か何かを慣らすと、
  暗い階段をアルスの人が下りてくる。
  その人について二階に上がって、
  北川鉄雄氏(アルス社主、白秋の弟)に背文字をきめてもらった。

しかし、大正12年9月、宵曲が旅行で東京を離れている間に
地震が起こり、「アルスは焼けた」。
寒川先生・宵曲の編纂した『子規全集』をアルスが出すことに
なっていたので、全集刊行も暗礁に乗り上げたかに見える。
だが、「アルスの再起は思ったよりも早かった。」
以降は省略するけれど、無事に子規全集が刊行されるまでが
『団扇の画』には詳しく書かれている。

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今日、得意先からの帰り、池袋(西武・イルムス館)で古本市をやっているので
ちょっと寄ってみた。ここでは以前、芥川の旋頭歌が載っている『明星』
見つけたので、開催されていると寄ることにしている。

そして、上記震災後の大正13年7月に刊行されたアルスの本を見つけた。
最初は、本のタイトル『子供の重い病氣の容體と手當』(アルス婦人叢書)を見て、
いくら300円と安価だからと言ってもなぁ。。。と、通り過ぎようとしたのだけど、
惹かれるものがあり、買うことにした。

家に帰ってよく見ると、やはり装幀が美しい。
巻末の「アルス婦人叢書」広告には
  「アルス婦人叢書は、婦人の生活を内部からも外部からも革新し
  婦人の使命を全からしめんが為の寄与である。」
と書かれていて、
  「家庭で出来る染色と絞り染」
  「趣味の家庭料理」
  「お化粧と髪の結い方」
  「現代 婦人の手紙」
など10冊の本が紹介されている。
買った本を見ると、アルスの婦人啓蒙への心意気が感じられる。
(四六判。装丁者が誰なのか、白秋詩集と違って書かれていない。)

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さて、ページをめくっていると、愛読者カードが入っていた。

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愛読者カード
御住所
氏名
書名

大震災のため多年苦心して作成いたしました愛読者カードを
焼失いたしました。
まことに御手数ですが上記各欄に御住所氏名及びこのカード挿入の
署名御記入の上御投函下さる様に御願いたします。このカードによりて
本社発行の学術科学・思想・婦人・趣味等に関する記事を満載した
(アルス新聞)を発行の都度御送呈いたします。尚このカードは
一度御出し下さったら永久大切に保存いたしますから
御住所御変更等の場合の外は再び御出しにならないでも宜しうございます。
                                 ア  ル  ス




活版の昔懐かしいはがき。。。切手を貼って投函したら、
大正13年のアルスに届くかもしれないね。。。(^^)
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by youyouhibiki | 2009-02-13 00:05 |  アルスのノートと本 | Comments(0)

アルスの本

最近、神保町の得意先へ週1ペースで納品に行くのですが、
古書店街を通るかどうかで、けっこう悩みます。
ふだんは、お茶の水→明治大学構内→山の上ホテル横
→公園横坂道を下りる
というルートで行くわけで、こうすると本屋さんに
立ち寄らなくてもいいわけです。

そうすると、時間もお金も節約できるのですが。。。

久しぶりにお天気がよくなったりすると、
ふと足が古書店街の方へ向かいます。

そして。。。

店頭で安い本ばかり売っているワゴンの一番上に、
アルスの本を見つけてしまいました。
(以前、アルスのノートをみつけてから、
アルスの本が見たいなぁ。。。とぼんやり思っていたのです。)
白秋詩集1と2。各冊500円。
大正9年初版で、その本は大正13年、第18版。
シミもあるし、買おうかどうしようか、けっこう悩みましたが、
結局買ってしまいました。

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荒い麻のような、ちょっとチクチクする布に、
金の唐草(?)模様。
日本の工芸に、金線を打ち付ける技法がありますが(何と言う?)、
ちょっとそんな感じがします。
サイズは120×156ミリくらい。
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本扉の次のページに「装幀及扉畫 恩地孝四郎氏」と書かれています。

鳥の絵とレタリングが可愛らしいです。
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追記:平凡社の別冊太陽『本の美』によると、この本は「ビロード布製 金押」と
書かれているので、途中で素材が変わったもよう。。。
なるほど、ビロードの初版は手にしっくり来たのだろうなあ。。。
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by youyouhibiki | 2008-10-06 21:54 |  アルスのノートと本 | Comments(4)

「アルス」ロンガ、ウィータ・ブレウィス

暑かったので一休みしようと入った江古田・日芸前の古本屋さん。
平積みの本の山の下の方から一冊の古い本を掘りだした。

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扉の文字はラテン語で「ars longa, vita brevis」と読める。
中を見ると一冊のノート(書き込みなし)で、しかも三方金。
本扉には「1928 アルス」の文字。
……アルスって、もしかしたら昔の装幀の本によく出てくる出版社??

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少しシミなどもあり、ちょっと迷ったが、値札が付いていなかったので、
お店の人に値段を聞いてみた。
心の中で、500円なら買い、1000円ならパス、かな?
なんて思いながら。。。

  「300円ですね」

というわけで、いただいて帰りました。

家で調べたら、アルスは大正時代に北原白秋の弟、北原鉄雄が創設した
出版社で、恩地孝四郎(『月に吠える』などを装幀)が多くの本の装幀をしたらしい。
そう言われてみれば、恩地孝四郎っぽい装幀か。。。??

その後、検索してみたのだが
「ars longa, vita brevis」とは、「芸術は長く、人生は短し」と
訳されることが多いようだが、もとの意味は
「技術は長く、人生は短い」というソクラテスの言葉であるらしい。
(なので、技術はもともとは医術のこと)

それからさらに検索していて、野溝七生子が『アルスのノート』という自伝小説を
1928年に書いているらしいことがわかり、
こちらは図書館に予約を入れた。連絡が来るのが楽しみである♪

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ESPARTO/SUPERFINE/BRITISH MANUFACTURE という
透かし入りの紙。
このノートの持ち主は、文字を書き込むのがもったいなくて、
名前すら書かなかったのではないだろうか?
……などいろいろ想像してしまう。

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サイズは138ミリ×204ミリに、表紙は天地4ミリ、小口8ミリ大きい。革装。

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by youyouhibiki | 2008-07-16 00:52 |  アルスのノートと本 | Comments(6)


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