岡倉天心展~「創作茶席『五色界』展」

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東京藝術大学美術館に
「岡倉天心 ― 芸術教育の歩み ―」を見に行った。
シンポジウムも、高階秀爾氏の貴重講演を聴くことができた。

これらはどちらかというと東京藝大の初代校長、教育者としての
天心を主に取り上げていたので、少し物足りないような気もした。

ただ、今回は天心をいろいろな面から捕らえようという企画なのだと思う。
「藝大茶会」というお家元直々のお手前による大茶会も開かれたり、

 藝大教授陣による創作茶席・茶道具の展示
 「創作茶席『五色界』展」

という催しもやっており、この「創作茶席『五色界』展」がとてもよかった。


これは、東京藝大の教官が、おのおの一つの色を受け持って
茶室をつくるものだったが、私がとくにすてきだなと思ったのは

■赤 「赧庵 (たんあん)」 (担当:工芸科教員 山下 了是)

赤(赧)に染めた羽二重の布を茶室の壁、天井がわりに掛けたもの。

先にサントリー美術館「BIOMBO」についてのブログで白屏風について触れたが、
これも、もともとは白い布を張り巡らしたり、掛けたりしていたのだそう。

なにか心の中のプリミティブな部分でとても共感できたと思う。

(禊ぎのためのほされた衣を詠った持統天皇の
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」ともつながるものか。。。)

羽二重も、紅葉や花、その他文様が織り込んであるもの、
無地のものを色はかえず使っていたのも美しかった。


「創作茶席『五色界』展」詳細はこちら:
http://www.geidai.ac.jp/guide/120th_anniv/chaseki_01.html

◇概要
「本展は東京藝術大学創立120周年企画『藝大茶会』の一部として、
青・赤・黄・白・黒の五色をテーマに、5人の教員がそれぞれ異なる素材で
五つの創作茶席を構成するとともに、茶道具も多くの教員が思い思いに創作して
展示を行います。 「色界」とは仏教で言う三界[さんがい 欲界・色界・無色界]の
中間に位置し、悟りに向かい禅を行う世界であり、まだ、肉体の物質性をとどめるが、
すでに欲望を脱した生命の世界とされています。 心を鎮めて観想を深めるに従い、
悟りに近づく天声が聞こえてくるかもしれません。
――東京藝術大学 美術学部長 六角鬼丈」 (展覧会案内文より)

■青 「零庵 (ぜろあん)」 (担当:デザイン科教員 尾登 誠一)
■赤 「赧庵 (たんあん)」 (担当:工芸科教員 山下 了是)
■黄 「幸庵 (こうあん)」 (担当:デザイン科教員 橋本 和幸)
■白 「石間 (いしま)」 (担当:彫刻科教員 林 武史)
■黒 「映幻 (えいげん)」 (担当:絵画科油画教員 小山 穂太郎)

     *

シンポジウム、高階秀爾氏の基調講演の内容、ごく短く要約すると:

 天心の多面体について。国粋的であり国際的、詩人であり実務家、思想家であり
  行動家である天心について。伝統と革新、過去と現代の両面を重んじる天心。

 明治期の主に情報、技術を輸入する時代に日本について発信したこと、
 外国と日本とのせめぎあいの中で『自己を確立すること』を弟子たちに教えたこと、など。。。

 (その後の鼎談への序奏。鼎談でさらにつっこんだ話になったと思う。)
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# by youyouhibiki | 2007-10-06 22:31 | 美術 | Comments(0)

クローデルの仏訳詩集『DODOITZU』(どどいつ)

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図書館で借りたポール・クローデル全集『EXTRÊME ORIENT Ⅰ』に、
日本の小詩を訳した『DODOITZU』が収録されている。

芳賀徹氏の『ひびきあう詩心』(TBSブリタニカ)によると、翻訳されたのはクローデルが
退官した次の年(1936年)の夏で、11月には雑誌に載せられた。

その後、1942年、世界大戦のさなかに『百扇帖』がフランスで出版され、
終戦の年1945年に『DODOITZU』が出版された。

全部で26編ある詩は、ほとんどが英訳も付いているが、全集では原詩はわからない。
『ひびきあう詩心』に、原詩と、クローデル訳の芳賀氏和訳が数編載っているので、
少し引用させていただこうと思う。

     *

思い出す夜は 枕と語ろ
まくら物いへ こがるるに

  L'OREILLER
La nuit quand je ne dors pas
L'oreiller et moi l'on cause
Ecoute, petit oreiller!
Je l'aime! Je l'aime!

  THE PILLOW
At night when I think of him
My pillow and I we talk.
Listen to me, o little pillow:
I love him! I love him! I love him!

  枕
夜 眠れねば
枕とわれ 語りあふ
聞けよ 小まくら
「あのひとが好き あのひと恋し」

     *

こなた思へば 野もせも山も
藪も林も 知らで来た

  D'UN SEUL BOND
D'un seul bond
Je t'aime je suis venue
Le torrent et les montagnes
Les forêt et la compagne.....
Je ne m'en suis pas aperçue!

  IN ONE BOND
Dear love I have come!
Forest and hill's over
Roaring wave and snow:
Dear love I saw none.

  一っとびで
あなたが好きで わたしは来たの
瀧つ瀬も 山も
森も 野も
なにひとつ 目にはいらずに


     *

また、ちゃんとした原詩は(私には)わからないけれども、このような訳詞もある。
(火のないところに。。。)

  FEU SANS FUMEE
Connaissez-vous ma bien-aimée
Ce feu que brule sans fumée?

  THE FIRE WITH NO SMOKE
Secret delight and pain
A fire without a stain.

     *

  PARTOUT!
La lune au levant
L'étoile au couchant
La lune là-haut
L'étoile dans l'eau
Sens dessus dessous
Mon amant partout!

  EVERYWHERE
Moon rising
Star setting
Moon all over
Star in water
Topside down
--- I love my own!


英訳では原詩に忠実に、というより、詩のここちよさに重きが置かれているように思う。
『ひびきあう詩心』によると、原作をクローデルが解釈して翻訳をしたものもあり、
それらはいかにもクローデルらしいのだが、それはまた機会を改めて。
また、クローデルは、日本語から直接訳したのではなく、すでにあった仏訳を
さらに仏訳しているとのことである。

上の画像は、クローデルの『聖ジュヌヴィエーヴ』(富田渓仙画)
http://www.paul-claudel.net/oeuvre/japon.html
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# by youyouhibiki | 2007-10-05 00:19 |  ポール・クローデル | Comments(2)

『漢詩百首 日本語を豊かに』  

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今年4月から習い始めた書道だが、
11月にはじめての検定を受けることになった。

半紙に納まりやすい漢字5文字か6文字、
好きな字を選んでよいとのことで、
気をつけて漢詩を見るようにしている。

とくに日本の漢詩はあまり読んだことがないので、
これを機会に知りたいと思っていた。

そんな折に見つけたのが
『漢詩百首 日本語を豊かに』(高橋睦郎著・中公新書)2007年3月刊
である。

この本では、まず漢詩のルビ付き読み下し文が改行なしに2行くらいで
紹介され、つづいて著者の訳があり、解説へと続く。

従来のものよりも読みやすい上に、詩人(著者)の訳も美しい。
日本の漢詩が100首中40首というのも嬉しい。

よく目にする頼山陽や漱石だけではなく、
こちらに揚げたようなベネチアを詠った詩もある。
(ちなみに成島柳北は明治5~6年に東本願寺法王に随行して渡欧)

「もし漢詩というものがなければ、江戸時代の詩歌史は
かなり貧しいといわざるを得ません。
……漢詩という大きな流れがあったことで、
どれほどたくさんのことが言えたかわかりません。」 

と著者は言う。確かに、とこの本を読んで私も思う。

     *

今回、この本の画像をどうしようかと考えた。
中公新書の表紙を載せてもつまらない。
漢詩をどうやって引用しようかとも考えた。
ルビをかっこに入れると、それだけで煩雑になって読みづらい。

というわけで、一首を画像にして載せてみるわけだが、
原文がないのが残念である。
うんとポイントを下げて、巻末にでも載せておいてもらえると
有り難いのだが。
それでないと、習字の検定に使うまで、さらなる道のりが
必要になってくるので。。。
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# by youyouhibiki | 2007-10-03 09:38 | 詩歌(下記以外) | Comments(2)

ジャネット・ウィンターの伝記絵本

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今日は雨の中、図書館に予約した本を借りに行った。

借りたのは『ビアトリクス・ポターのおはなし』
(ジャネット・ウィンター絵と文・長田弘訳・晶文社・2007/3月刊)。

作者のジャネット・ウィンターは「絵本伝記作家」で、
私はこの人にかなりハマっている。

『バスラの図書館員-イラクで本当にあった話-』(晶文社)では
イラク戦争の折、図書館の本を戦火から守る図書館員の物語を描き、
『私、ジョージア』では、画家のオキーフの伝記を描いている。

彼女自身が画家だけあって、『私、ジョージア』では、
画家の創作の秘密のようなものが上手く描かれていて素晴らしかった。

それでは今回借りた『ビアトリクス・ポターのおはなし』はどうかというと、
ビクトリア時代に(いかにもあの時代らしく)子ども本位でない育てられ方をした
個性的な少女の物語なのだけど、いまの時代でも
ちょっとたいへんな育てられ方をする子どもというのは
ずいぶんいっぱいいそうで、そういう子どもたちが読んだら、
きっと「こんな生き方もあるんだ」と安心できそうな、そんな本だと思う。

もちろんお説教くさくなんてない。むしろ、その反対だ。
そして魂の奥深くにしみこんでくる。

たとえば、

「ふしぎなことですが、絵は、見て揺さぶられると、
その印象がこころのとんでもなく深いところにのこるのです。」

というような文章。
子どものうちにこういう文章にふれることができるとしたら、
その子どもはきっと幸せだろう、とは『私、ジョージア』を読んだときも
思ったのだが。。。

「伝記」というジャンルが好きなほうでよく読むほうだが、
ジャネット・ウィンターはまだ若い方のようで、これからもどんな作品が出されるか、
将来が楽しみだ。

実は先日映画『ミス・ポター』を見に行った。
http://www.excite.co.jp/cinema/miss-potter/

ポターという女性も、とても魅力的である。
ビクトリア時代という時代も、なんだかミステリアスである。

というわけで、このあたりについては、少しまとまって本を読んでみようと思っている。


画像は晶文社のサイトより:
http://www.shobunsha.co.jp/bibliotheca/young/#ha_08


追記:ウィンターは1936年生まれ。
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# by youyouhibiki | 2007-09-30 20:11 |  ウィンター/ディキンソン | Comments(0)

BIOMBO~王朝屏風絵への空想

「BIOMBO/屏風 日本の美」展に先週行った。
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/07vol03biombo/index.html
内容:
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/07vol03biombo/program.html

まず、屏風というものの役割が面白かった。
屏風は空間を仕切るもの、蹴飛ばせば倒れるくらいの存在である。
がしかし、いったん仕切られると、おいそれとは破ることはできない、
暗黙の「約束」が出来上がる。
そして、その先は寝所であったり、俗に対する聖であったりする。

お産のときの白屏風、白地に雲母や胡粉で鶴亀、松竹などを描いたものは
明らかに俗を仕切って聖なる世界を作り出すものだったに違いない。
私は今までこういう習慣があるということを知らなかったので、
よけいに印象に残った。まさに「結界」だと思う。
(現在2点しか残っていないうちの1点が陳列されていた)

     *

……などと考えていたら、『詩歌ことはじめ』(大岡信著・昨日のブログ参照)に
「幻の世俗画-王朝屏風絵への空想」という文章が載っていて、興味深かった。

9世紀後半、漢詩と絵が組み合わされ、10世紀に入るとすぐ和歌と絵の
組み合わせに変わって大量に作られた平安朝の屏風絵は、今でいう「詩画集」
だったのではないだろうか、と大岡氏は言う。

現存する平安朝の絵画というと、国宝・重文の宗教画や絵巻だったりするが、
風俗画を描いた屏風が大量にあって、当時は人々の目を楽しませていたのだろう、とも。

(風俗画の主題は、世俗のいっさい--「春夏秋冬の風物と行事を描く月次図、
家の内部でくりひろげられる男女の交渉を中心とした屋内風俗の絵、
あるいはまた名所・歌枕など旅情を誘う土地の絵、唐絵の影響をたくみに消化した
大和絵の日本的山水画や脱俗隠士の閑居姿を描いた図、
また農業漁撈を中心とした庶民生活の描写その他」--であっただろう。)

氏の論考は、さらに貫之集の屏風歌を引用しながら続いていくのだけれども、
結局のところ、それらの屏風は火事で焼失したり、引っ越しの折などに捨てられたりして、
今は残っていない。

大岡氏曰く:「私はそれらの消滅を惜しんだが、しかしそれらは、本質的に、
時代とともに消え去るべき運命のものであったともいえる。。。」

     *

平安時代の屏風絵は2点しか残っておらず、そのうちの1点「山水屏風(国宝)」が
今回の「BIOMBO/屏風 日本の美」展では、展示されていた。
http://www.emuseum.jp/cgi/pkihon.cgi?SyoID=1&ID=w013&SubID=s000

また、ケルン、メトロポリタン、クリーヴランド、サントリー各美術館と 弘経寺の5ヶ所に
離ればなれになった続き物の屏風(もと襖絵)が、一同に会している。
 「祇園祭礼図屏風」ケルン東洋美術館、「祇園祭礼図屏風」サントリー美術館
 「社頭図(しゃとうず)屏風」メトロポリタン美術館
 「賀茂競馬図(かものくらべうまず)屏風」クリーブランド美術館 ほか

あるいはまた、ボストン美術館とサントリー美術館に分かれた麝香猫の屏風も 一緒に
展示され、右の屏風に描かれた母子猫と、 左の父猫も無事に再会を果たしている。
 「松下麝香猫図(しょうかじゃこうねこず)屏風」ボストン美術館
 「樹下麝香猫図((じゅかじゃこうねこず)屏風」サントリー美術館

屏風の儚さを思うとき、これらの邂逅が、どれだけ「有り難い」ものであるかに
思いを馳せずにはいられなかった。
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# by youyouhibiki | 2007-09-30 01:51 | 美術 | Comments(0)

『詩歌ことはじめ』(大岡信著)

先週、神保町で(『詩歌ことはじめ』(大岡信著/講談社学芸文庫)を見つけ、
移動時間に読んでいる。
1975年から1981年までの間に、様々な雑誌に発表されたものを集めた評論集。

カバー裏には、このように記されている。

     *

本書は、短歌や俳句、また現代詩や批評・美術など、日本の詩歌や美意識に
一貫して流れている基本的なものは何かを追求した評論集である。
具体的、個別的な作品を突きぬけて、大いなる普遍性に到達したいと念願する著者は、
詩も散文も、また宗教思想も芸術思想も、全部どこかで大きな意味で繋がり合って
一つの秩序ある世界を作っていると説く。
詩歌と思想の根を求めて日本詩歌の新しい常識づくりを目指した
画期的な見取り図といえる。

     *

「日本詩歌の読みとりかた」「幻の世俗画-王朝屏風絵への空想」
「柳宗悦-木喰発見の意味するもの」「世阿弥の『花』」
「連詩・連句の場から」などについての論評は、考えるところが多かった。
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# by youyouhibiki | 2007-09-29 21:00 | 詩歌(下記以外) | Comments(0)

ポール・クローデル全集

近くの大学図書館で、洋書を借りることができるようになった。

さっそく借りたのは、ポール・クローデル全集(ŒUVRES COMPLÈTES DE
PAUL CLAUDEL)その他。

特に興味を惹くのは『EXTRÊME ORIENT』の2巻である。

さっと目を通してみると、
『La Poésie française et l'Extrême-Orient』
『Connaissance du Japan』
『Adieu, Japon』
『DODOITZU』
など、日本語訳が出ておらず、かねてより読みたかったものを
読むことができる。

また、ガリマールの選集には、クローデルの20歳代から晩年までの
日記(Journal)全2巻があり、特に在日中の部分は興味深い。

ところで私はいま、「読むことができる」と書いたが、
実を言うと、フランス語がさほどできるわけではない。
それなので、少しずつ読むことになりそうである。

これらの本のおかげで、私は一生、退屈しないですむだろうと思っている。
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# by youyouhibiki | 2007-09-29 18:54 |  ポール・クローデル | Comments(0)

『悪童日記』三部作

1991年の発刊当時に、友人に勧められていながら読んでいなかった『悪童日記』。
小説をほとんど読まない(読めない)私なので、そのままにしていたのだけど、
ブックオフで文庫本が300円で出ていたので、とうとう買って読んだ。

そして一気読み。
そして『ふたりの証拠』『第三の嘘』まで一気読み。

本を読んで半徹って何十年ぶりかもしれない。。。
それくらい面白かった。
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# by youyouhibiki | 2007-09-29 18:30 | 本(下記以外) | Comments(0)


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